2026年10月に、いまの法令に合わせて内容を見直しました。
- 株式会社は、内容の違う9つの種類株式を発行できる
- 株を譲るのに承認が必要な会社なら、株主ごとに扱いを変える定めもできる
- 事業承継や、オーナーの判断能力の低下への備えに使われる
- 税金の扱いにも影響するため、税理士とあわせて検討する
株式会社は、内容の違う株(種類株式)を発行したり、株主ごとに扱いを変えたりできます。家族で経営する会社の代替わり(事業承継)や、オーナーに万一のことがあったときの備えとして使われています。
まずは、株主総会の決議の種類
| 決議 | 決議の要件(原則) | 主な使いみち |
|---|---|---|
| 普通決議 | 議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数 | 役員の選任など |
| 特別決議 | 議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上 | 定款の変更など |
| 特殊決議 | 議決権を使える株主の半数以上で、その議決権の3分の2以上 | すべての株に譲渡の制限をつけるときなど |
| 特殊決議(属人的株式) | 総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上 | 株主ごとに扱いを変える定めをつくるとき |
決議の要件や、株主総会を開くまでの招集の手続きを誤ると、あとで決議の効力が争われるおそれがあります。
9つの種類株式(会社法 第108条)
| 剰余金の配当 | 配当を優先して、またはあとに受ける株 |
|---|---|
| 残余財産の分配 | 会社をたたむときの財産の分配を、優先して、またはあとに受ける株 |
| 議決権の制限 | 株主総会で議決権を使える事項が限られている株。議決権がまったくない株(無議決権株)も |
| 譲渡の制限 | 譲るときに会社の承認が必要な株 |
| 取得請求権付き | 株主が会社に買い取りを求められる株 |
| 取得条項付き | 決めた理由が起きたとき、会社が買い取れる株 |
| 全部取得条項付き | 株主総会の決議で、その種類の株を会社がすべて取得できる株 |
| 拒否権付き | 株主総会などの決議に「拒否」できる株。黄金株ともいいます |
| 役員の選任権付き | その種類の株主の総会で、役員を選べる株 |
種類株式を発行するには定款に定め、登記をする必要があります。いくつかを組み合わせて使うこともできます。
事業承継での使い方の例
| こんなとき | 使い方 |
|---|---|
| 後継者に経営を任せつつ、ほかの相続人にも財産を分けたい | 後継者には議決権のある株を、ほかの相続人には議決権のない株(配当を優先する株など)を相続させる |
| 株を後継者に渡したあとも、しばらく見守りたい | 先代が拒否権付きの株(黄金株)を1株だけ持ち、大事な決議に拒否できるようにする |
| 社外に株が散らばるのを防ぎたい | 取得条項付きの株にして、決めた理由(退職など)が起きたら会社が買い取れるようにする |
株主ごとに扱いを変える「属人的株式」(会社法 第109条)
株を譲るのに会社の承認が必要な会社では、定款に定めれば、次の3つについて株主ごとに違う扱いができます。
- 剰余金の配当を受ける権利
- 残余財産の分配を受ける権利
- 株主総会の議決権
この定めは登記をする事項ではなく、登記簿には載りません。種類株式よりも柔軟に決められ、家族で経営している会社などで使いやすい仕組みです。
使い方の例:オーナーの判断能力が低下したときの備え
オーナーが認知症などで判断ができなくなると、株主総会で議決権を使えず、役員の選任など会社の大事なことを決められなくなるおそれがあります。信頼できる後継者に株を1株持ってもらい、次のように定款に定めておけば、会社の意思決定を続けられます。
(株主総会の議決権に関する株主ごとに異なる定め)
第○条 株主Bは、株主Aに次の事由が生じている間に限り、その有する株式1株につき1,000個の議決権を有する。
(1) 認知症、事故、病気などにより判断能力を欠く状態にあること
(2) 行方が分からないこと
(3) そのほか、株主総会に出席して議決権を行使できない事由
オーナーの判断能力の低下への備えには、ほかに、家族信託や任意後見という方法もあります。会社とご家族の状況に合わせて、組み合わせを考えます。
取り入れるまでの流れ
- 目的を決める代替わりの予定、相続人の顔ぶれ、残したい経営の形をうかがいます。
- 仕組みを選ぶ種類株式・属人的株式・家族信託などから、目的に合う方法を選び、税理士と税金の影響を確かめます。
- 株主総会で定款を変える必要な決議(特別決議や特殊決議)で、定款を変えます。
- 登記をする種類株式の場合は登記が必要です(属人的株式は不要)。登記の申請は、提携する司法書士が行います。
種類株式や属人的株式は、株の評価や贈与・相続のときの税金の扱いに影響することがあります。取り入れるときは、税理士にもあわせてご相談ください。
よくあるご質問
種類株式は、小さな会社でも使えますか。
使えます。会社の規模にかかわらず、定款に定めれば発行できます。家族で経営している会社の事業承継で使われることが多い仕組みです。
属人的株式の定めは、あとから外せますか。
定款を変えれば外せます。ただし、株主の権利に関わるため、決議の要件や株主の同意について、事前に確かめておく必要があります。
家族信託とどちらがよいですか。
目的によって向き不向きがあります。会社の株だけでなく、不動産なども含めて管理を任せたいときは家族信託、会社の意思決定を続けられるようにしたいときは属人的株式、というように使い分けたり、組み合わせたりします。
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